Sun, 26 Aug 2007
ベートーベンのピアノソナタ。野平一郎と杉谷昭子の演奏
最近はすっかり保守的になってしまって、ベートーベンのピアノソナタとかを良く聴いているのです。
ベートーベン ピアノソナタ |
ベートーベン ピアノソナタ |
スポット的にはもっと幾種類も持っているのですが、全集としては野平一郎と杉谷昭子のものだけ、かな。どちらも今世紀になってからの録音です。…演奏者の出自も演奏内容も、両者でとても異なった部分が多いです。
フランスでキャリアを積んだ、作曲家兼キーボード奏者の野平一郎。作曲のほうはバリバリの現代音楽、演奏のほうはピアノのみならず他の鍵盤楽器もこなす。ディスクのリーフレットにも、ベートーベンのソナタについて滔々と自説を書くことが出来る理論派。重苦しさはまったく無く、整った風貌で、わくわくするような新しい発見に満ちた演奏だと思う。
ドイツでキャリアを積んだ、杉谷昭子。一連のベートベンの録音では、山口県の松永ピアノが特別に調律と整音を行ったハンブルク製スタインウェイを使用。松永ピアノの中の人は、その筋で有名な技術者なのです。スタインウェイ系に限らず、ヤマハでもカワイでも、切り札的なコンサート・チューナーというのが居ます。メーカーお抱えの中にも在野にも。…使用しているピアノの特性も相俟って、非常に重厚な演奏。表情付けは割と細かく行っていて、もし別のピアノを使っていたら、ちょっとなよなよした演奏になっていたのかも知れないのだけれど、ハンブルク製スタインウェイの響きがえらく固茹でなので、そういう風にはなっていません。
杉谷昭子の演奏は、野平一郎のものより全体的に演奏時間がかなり長くなっています。こちらのほうの演奏を続けて聴いていると、野平一郎の演奏がいかにも軽佻浮薄に聞こえるし、逆の時は杉谷昭子の演奏が酷く鈍重なものに聞こえます。どちらも良い演奏だと思いますが。