Mon, 07 May 2012
スペインの作曲家強化(中略) ー Manuel de Falla
Manuel de Falla(マヌエル・デ・ファリャ)(1876生1946没)はスペインのクラシックの作曲家。El Sombrero de tres picos(三角帽子)とEl Amor Brujo(恋は魔術師)の二大傑作でよく知られる。
- De Falla: El Corregidor Y La Molinera - Orquestra de Cambra Teatre Lliure, Josep Pons, Ginesa Ortega & Olga Serra
- De Falla: El Amor Brujo, L'amour Sorcier - Orchestre Poitou-Charentes Jean-François Heisser
- Falla: Música Para Piano - Esteban Sánchez
リストに挙げたのは、El Sombrero de tres picos(三角帽子)の初演版であるEl corregidor y la molinera Cuadro(代官と粉屋の女房)、El Amor Brujo(恋は魔術師)の初演版であるGitanería(ヒカーノ気質)(録音の表記は恋は魔術師のままだけれど)、ピアノ曲集のみっつ。
El corregidor y la molinera Cuadroはフルート(ピッコロ持ち替え)、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン、トランペット、ピアノ、メゾソプラノが各1名、弦五部はベース以外2名という室内楽編成。ここで重要なのは、ティンパニやらカスタネットやらの打楽器を含まないということで、じゃああの有名な序奏の部分はどうしたんだというと、序奏はこの時は無いのである。Gitaneríaはさらに小編成で、フルート、オーボエ、ホルン、トランペット、ピアノ、ヴィオラ、チェロ、ベース、メゾ・ソプラノまたはアルトが各1名。リストに挙げた録音は、聴いた限りではこの編成に沿っているようだ(弦は二人にしているかも)。では、このような小編成では迫力に欠けたりするのかというと、とんでもない。逆にギラギラしていてもの凄く楽しいのだ。弦パートが少ないせいで重音を鳴らす時とか、特にギラっとする感じ。そういう意味で、Gitaneríaのほうがより楽しい。クラシックでなくラテンの棚に置いてある曲っぽくも聴こえる。
リストに挙げた三枚目はピアノ曲。ファリャにピアノ曲は意外に少なくて、編曲物を除くと一枚に収まってしまう程度だが、中身は濃いと思う。スペイン的情緒はアルベニスや他の作曲家よりも濃厚で、フランス的というか近代的なというか新しい和音の感覚も他の作曲家よりも鋭敏なんだ。演奏者のEsteban Sanchez(エステバン・サンチェス)(1934生1978没)はスペインのENSAYO(エンサヨ)レーベルにアルベニスやトゥリーナ等の録音が僅かにある程度だけれど、どれもアリシア・デ・ラローチャに匹敵する演奏だと思う。ちょとだけ沈んだ感じ。手の小さいラローチャと違って、いざとなればチカラが入るし。
Sun, 06 May 2012
スペインの作曲家強化(中略) ー Aita Donostia
Aita Donostia(アイタ・ドノスティア)(1886生1956没)はスペインはバスク地方出身のクラシックの作曲家。…日本語ではほとんど情報が無いな、困った。読みが合っているかどうかも分らない。iTunes Storeで検索すると、同郷で同い年の作曲家Jesús Guridi(ヘスス・グリディ)と並んで写っているジャケット絵が出てくる。英語版ウィキペディアには、His most popular work is the Basque Preludes, a set of fifteen piano pieces inspired by Basque traditional music, arranged in a very romantic way, that reminds Robert Schumann's and Edvard Grieg's styles.
なんて書いてある。酷いことを書いているような気もするけれど、聴いた後に読むと、的確なんじゃないかと。一人の作曲家のなかでオーケストラ曲よりピアノ曲のほうが保守的になるのって、ありがちだし。
- Basque Music Collection, Vol. VIII: Aita Donostia - Coral Andra Mari, Cristian Mandeal & Euskadiko Orkestra Sinfonikoa
- Donostia: Basque Preludes - Nostalgia - Jordi Masó
iTunes Storeで検索するともう少し出てくるんだけれど、買ったものだけ挙げる。Clavesからたくさん出ているバスクの音楽シリーズの内の一枚で、オーケストラ曲を収録したものと、ピアノ曲を収録したもの。
上でJesús Guridiのことに触れたけれど、オーケストラ曲を聴いた限りだと、凄く似た雰囲気なんだ。そこでも書いたけれど、ディーリアスと並べて聴いても違和感が無いんじゃないかと思う。曲想もそうだけど、曲のレベル的にも。iTunes Storeではピアノ曲全集と合唱曲が入手可能なので、後でまた買おうと思う。
Sat, 05 May 2012
スペインの作曲家強化(中略) ー Manuel Blancafort
Manuel Blancafort(マニュエル・ブランカフォルト)(1897生1987没)はバルセロナ出身のクラシックの作曲家。正式な音楽教育は受けなかったが、ピアノ・ロール工場長だった父からの繋りでジョアン・ラモート・デ・グリニョンに和声法を学ぶ。1914年に、同郷で四つ年上の、当時第一次世界大戦を避けてパリ留学から地元に戻っていた作曲家フェデリコ・モンポウの知遇を得て激励される。その後もScenes d'enfants(子供の情景)を献呈されるなど、モンポウと親しく交流する。その経歴と作風から、モンポウと比較されることがある。
- Blancafort & De Grignon: Concertos - Daniel Blanch, Podlasie Philharmonic Orchestra & Marcin Nalecz-Niesiolowski
- Blancafort: Complete Piano Music, Vol. 3 - Miquel Villalba
リストに挙げたのは、師匠の息子リカルド・ラモーテ・デ・グリニョンのTríptico de la Piel de Toroを併録したConcierto Para Piano y Orquesta No. 2 en la Menor "Ibérico"と、ピアノ曲全集の第三巻です。
どうしてもモンポウとの比較になってしまうのだけど…両者の曲の共通項としては、その内気さ、詩的な繊細さ等かな。ブランカフォルトはモンポウと異なり、多くの管弦楽曲やリストに挙げたようなピアノ協奏曲を書いている。管弦楽曲は聴くことができなかったけれど、1946年の作というピアノ協奏曲を聴いてみると、ものすごく穏健というか、ドビュッシー経由のシューマンというふうなんだ。スペイン風のふしまわしは出てくるけれど、ぎらっとしたものは全然感じない。ロマンティック。
ピアノ独奏曲を聴くと、確かに先程書いたような共通項もあってモンポウっぽく(モンポウ経由でサティっぽくドビュッシーっぽく)響く瞬間というのは多々あって、モンポウが好きならこれも好きになるんじゃないかな、と思う。でも、モンポウにあってブランカフォルトに無いものが明らかにあって…ええと、モンポウを語るときに「繰り返される鐘の響き」みたいな話しがあるじゃない。コーンってカツーンって鳴らされる、ジーンと浸透するような響き(子供か)。これが無いせいでこう、するする流れていっちゃう。モンポウはこわいけれど、ブランカフォルトはこわくない。
Fri, 04 May 2012
スペインの作曲家強化(中略) ー Cristóbal Halffter
Cristóbal Halffter(クリストバル・アルフテル)(1930生)はスペイン出身のクラシックの作曲家。ロドルフォ・アルフテル、エルネスト・アルフテルの甥。クリストバルの家族はスペイン内戦から逃れドイツに移住したが、内戦終結後すぐにスペインへ戻り、クリストバルはそのままスペインでキャリアを積むことになる。自国以外では、アレクサンドル・タンスマンやアンドレ・ジョリヴェに師事。子息のPedro Halffter(ペドロ・アルフテル)も作曲家及び指揮者で、iTunes Storeで指揮者としての録音がいくつかひっかかる。
- Sacher. Schweiz. Nachhall - Lubeck Philharmonic Orchestra, Roman Brogli-Sacher & Jun Mo Yang
- Prelude For Madrid 92/Daliniana/Fantasia On A Sonority Of Handel - Orfeon Donostiarra
- Obras Para Conjuto Instrumental - Jose Luis Temes
- Cristóbal Halffter: The String Quartets, Vol. 1 - Arditti Quartet
- Cristóbal Halffter- Música Para Pianos - Alberto Rosado & Juan Carlos Garvayo
リストに挙げたのは、最初の三枚がオーケストラ曲の録音、四枚目がアルディッティ四重奏団による弦楽四重奏曲の録音、五枚目がピアノ曲の録音。二枚目は、iTunes Storeではそれと表示されていないけれどペドロ・アルフテルの指揮です。アマゾン等で検索するとそのように出てくる。
ウィキペディアを見ると、伝統的なスペインの要素と前衛的なテクニックを組合わせた作品を作曲
とか書いてある。…んー、例えばリストの一枚目で聴ける、Tiento del Primer Tono y Batalla Imperial(第一旋法によるティエントと皇帝の戦い)のことかな。ティエント(西: tiento)とは、15世紀中葉にスペインで生まれた音楽のジャンルである[1][2]。形式上はイングランド、ドイツ、ネーデルラントにおけるファンタジア、イタリアで創始されたリチェルカーレに類似する。
この曲はティエントという様式?に関係があるのか?ウィキペディアの説明を読んだが良く分らん。曲はオルガンっぽい静謐な響きの前半部分と、ダイナミックな音響が支配する後半部分から成り、ふむ?謳い文句っぽいことになっているのかも。はてなマークばっかりだ。聴いていて楽しくはある。iTunes Storeでこの曲は複数購入可能なので、代表作なのかな。もうひとつ、Fantasía Sobre una Sonoridad de G.F. Haendel (1981)(ヘンデル風の響きのファンタジア)も同様に複数購入可能。こちらはヘンデルがネタなのでスペインぽくは無いけれど、前衛的は響きというならこちらのほうがより強い。そして、両方の要素の入れ替わりも激しく行われる。
アルディッティ四重奏団が演奏するということは変化球じゃ無く直球の固茹でな「現代の音楽」ということだと認識しているので、ということはこのクリストバル・アルフテルという人もちゃんと聴くに値する人なのだろう、というのがこの人を聴こうと思ったきっかけ。でもまだちゃんと聴いていない。弦楽四重奏という形態は聴くのに骨が折れる…
伝統的な様式と前衛的な響きという観点から、ピアノ曲の録音もIntroducción, Fuga Y Final Op. 15など興味深く聴くことができそう。
スペインの作曲家強化(中略) ー Roberto Gerhard
Roberto Gerhard(ロベルト・ジェラール)(1896生1970没)はスペイン出身のクラシックの作曲家。スペイン出身者として唯一人のシェーンベルクの弟子として有名、らしい。文献にあたれなくて分らないけれど。スペイン内戦時には第二共和国側に立ったため、内戦終了後はイギリスに亡命。フランコ総統のほうが長生きしてしまったため、存命中は母国での演奏機会は無かった。…この人を聴こうと思ったのは、ググると「ファリャ以降で最も重要な作曲家」とかいう惹句が目に入ったからです。
- Gerhard: L'infantament Meravelloos de Schahrazada, Cancionero de Pedrell - Benita Valente & Tan Crone
- Gerhard: Piano Trio, Cello Sonata, Concierto para Ocho, Libra - Barcelona 216
- Gerhard: Symphony No. 1 & Violin Concerto - BBC Philharmonic Orchestra, Matthias Bamert & Olivier Charlier
リストに挙げたのは順に、初期の歌曲集L'infantament Meravelloos de Schahrazada, Op. 1を含む歌曲の録音、初期のピアノトリオを含む室内楽の録音、交響曲第1番とヴァイオリン協奏曲の録音です。
ピアノ・トリオから聴いてみたんだけれど、これがフォーレっぽい感じの花のように麗しい曲な訳です。続けてL'infantament Meravelloos de Schahrazada, Op. 1、これもスペイン風というよりフランス風の、実に美しい曲で。シェーンベルクに弟子入りする際に見せたのはこれらの曲なんだろうな。ちょっと借り物っぽくもあるけれど、実力のあるところを示せていると思う。
掴みは大変良かったので、今はシェーンベルクに師事した後の曲を聴いています。ヴァイオリン協奏曲とか。十二音技法だ何だといって、いきなり晦渋になる訳ではなさそうです。というか、ヴァイオリン協奏曲はスペイン的なノリも感じられ、大変楽しめる曲でした。30分以上の長さをまとめる構成力も、スペインの作曲家には欠け勝ちな能力…これは普通に聴かれても良いのでは。交響曲第1番のほうは、十二音技法が前面に出てくるらしいのでちょっと手強い…のか?
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