Fri, 04 May 2012
スペインの作曲家強化(中略) ー Roberto Gerhard
Roberto Gerhard(ロベルト・ジェラール)(1896生1970没)はスペイン出身のクラシックの作曲家。スペイン出身者として唯一人のシェーンベルクの弟子として有名、らしい。文献にあたれなくて分らないけれど。スペイン内戦時には第二共和国側に立ったため、内戦終了後はイギリスに亡命。フランコ総統のほうが長生きしてしまったため、存命中は母国での演奏機会は無かった。…この人を聴こうと思ったのは、ググると「ファリャ以降で最も重要な作曲家」とかいう惹句が目に入ったからです。
- Gerhard: L'infantament Meravelloos de Schahrazada, Cancionero de Pedrell - Benita Valente & Tan Crone
- Gerhard: Piano Trio, Cello Sonata, Concierto para Ocho, Libra - Barcelona 216
- Gerhard: Symphony No. 1 & Violin Concerto - BBC Philharmonic Orchestra, Matthias Bamert & Olivier Charlier
リストに挙げたのは順に、初期の歌曲集L'infantament Meravelloos de Schahrazada, Op. 1を含む歌曲の録音、初期のピアノトリオを含む室内楽の録音、交響曲第1番とヴァイオリン協奏曲の録音です。
ピアノ・トリオから聴いてみたんだけれど、これがフォーレっぽい感じの花のように麗しい曲な訳です。続けてL'infantament Meravelloos de Schahrazada, Op. 1、これもスペイン風というよりフランス風の、実に美しい曲で。シェーンベルクに弟子入りする際に見せたのはこれらの曲なんだろうな。ちょっと借り物っぽくもあるけれど、実力のあるところを示せていると思う。
掴みは大変良かったので、今はシェーンベルクに師事した後の曲を聴いています。ヴァイオリン協奏曲とか。十二音技法だ何だといって、いきなり晦渋になる訳ではなさそうです。というか、ヴァイオリン協奏曲はスペイン的なノリも感じられ、大変楽しめる曲でした。30分以上の長さをまとめる構成力も、スペインの作曲家には欠け勝ちな能力…これは普通に聴かれても良いのでは。交響曲第1番のほうは、十二音技法が前面に出てくるらしいのでちょっと手強い…のか?
Thu, 03 May 2012
スペインの作曲家強化(中略) ー Xavier Montsalvatge
Xavier Montsalvatge(ハビエル・モンサルバーチェ)(1912生2002没)はスペイン出身のクラシックの作曲家。最初に聴いたのはVictoria De Los Angelesが歌うCinco Canciones negras(五つの黒人の歌)でした。これがなかなか魅力的な曲だったので調べてみると…この人の惹句の一つに「アンティル諸島の音楽に影響を受け」とかあるんですけど、これは多分、スペインの植民地で現在はキューバだったりジャマイカだったりハイチだったりする、カリブ海の大アンティル諸島のことです。先住民は入植者が持ち込んだ疫病により全滅しており、現在住んでいるのは入植者やアフリカ系奴隷の子孫たちなので、影響を受けた音楽というのは元は多分スペイン+アフリカなのでしょう。後、バルセロナ・オリンピックの開会式の音楽、の一部を担当したとか。かなり重要人物っぽい。
- Montsalvatge, X.: Piano Music, Vol. 1 - 3 Impromptus - 3 Divertimentos - Sonatina Para Yvette - Recondita Armonia - Jordi Masó, Francesc Guillen & Granollers Chamber Orchestra
- Xavier Montsalvatge: Integral de Canto (Vol. 1) - Marisa Martins & Mac McClure
- Montsalvatge: Homenatge a Montsalvatge - アリシア・デ・ラローチャ, Gianandrea Noseda, Jaime Martin, María José Montiel, Orquestra de Cadaqués & Pepe Romero
- Montsalvatge: Canciones & Conciertos - Various Artists
リストに挙げたのは、ピアノ曲全集の第一集、歌曲全集の第一集、フルートやギターなど種々の協奏曲集、生誕100年に合せて出た代表作を集めたっぽいやつ、の四枚です。ピアノ曲全集は第一集が初期作品、第二集が後期作品らしいです。即興曲だのディベルティメントだのと、曲名からしてそれっぽい。第二集はノアの箱舟とか自由な鳥達とか。歌曲全集のほうはどうなんでしょう、作品目録とか見付からなかったので、良く分らない。
ピアノ曲の録音にはどちらもお尻にピアノ独奏の協奏曲が入っているのだけれど、第一集に入っているほうがどうも、作曲者の腕前を疑わせる出来栄えで。いやまあ演奏も弦合奏がささくれだってて悪印象に拍車をかけているんだけど、しょっぱなのダサい部分を通り過ぎれば、そこそこ聴けるんだけど。それまでのピアノ独奏の曲が、曲ごとに統一感は無いものの各々面白く聴けてた分、ギャップというか。
少し不安を感じつつリストの三枚目、二枚組みの協奏曲集を聴いてみたんだけれど、うーん…えーと…ごめん、どこが良いのか分らん。先程の印象と変らず、オーケストラの扱いが微妙な感じ。あまり効果的じゃないというか、独奏を全然盛りたてていないというか。…ピアノ曲と歌曲は他人にも薦められるけれど、オーケストラ曲のほうは無理だなぁ。
Wed, 02 May 2012
スペインの作曲家強化(中略) ー Ernesto Halffter
Ernesto Halffter(エルネスト・アルフテル)(1905生1989没)はスペイン出身のクラシックの作曲家。兄とともにGrupo de los Ocho(スペイン八人組)と呼ばれる。兄のクリストバル・アルフテル間違えたロドルフォ・アルフテルが独学らしいのと違って、ファリャの弟子。スペイン内戦時はこれを嫌ってポルトガルのリスボンに避難し、その後スペインの内情や国外との関係が落ち着く1953年まで戻らなかった。兄と違って政治絡みの話しは無いみたい。…五つ違いの兄弟で、同じ作曲家で、でも違う人生になっていくものなのだなあ、と。
- Halffter: Piano Music - Belen Gonzalez & Guillermo González
- Ernesto Halffter: La Corza Blanca (Integral de Canto) - Elena Gragera & Anton Cardo
- Halffter: Sinfonietta - Toldrà: Vistes Al Mar - イギリス室内管弦楽団 & Enrique García Asensio
- De Falla: Noches en los jardines de España - Halffter: Rapsodia Portuguesa - Gerhard: Alegrías - Guillermo Gonzalez, Tenerife Symphony Orchestra & ビクトル・パブロ・ペレス
リストに挙げたのは、ピアノ曲全集、歌曲全集、Sinfonietta en Re Mayorの入っている盤、Rapsodia Portuguesaの入っている盤。…多分、ファリャに師事したことが作風に影響を与えているのだと思う。兄のほうはピアノソナタとか書いて頭でっかちっぽいところがあるんだけど、弟のほうは民族主義的なものを残して、且つSinfonietta en Re Mayorみたいな新古典主義的な曲を書いている。もう少しオーケストラ曲を聴いてみたいんだけど、iTunes Storeには無いみたい(映画音楽ならひとつある)。
スペインの作曲家強化(中略) ー Rodolfo Halffter
Rodolfo Halffter(ロドルフォ・アルフテル)(1900生1987没)はスペイン出身のクラシックの作曲家。スペイン内戦時は第二共和国側(負けた方な)にあったため、戦後はメキシコに亡命。そこで後進の指導や作曲を、後には赦されてスペインで指導する機会もあった。…自分はMusica Mexicanaっていう録音でこの人の曲を聴く機会が有ったのだけれど、解説書とか読まないのでこういう背景とか知らないまま、普通にメキシコの人なのだと思っていた。同盤に収録されているObertura Festiva Op. 21やTripartita Op. 25には民族的な風味はまったく感じなかったけれど、Violin Concerto Op. 11は編成も手伝ってかそういうっぽいノリが感じられ、楽しく聴いておりました。
- Halffter: Don Lindo de Almeria, La madrugada del panadero - Jose Ramon Encinar & Orchestra Of The Comunidad De Madrid
- Three Portraits With Shadow - Extremadura Symphony Orchestra, Lola Casariego & Jesus Amigo
- Halffter: Chamber Music, Vol. 2 - Miguel Angel Jimenez, Beatriz Millan, Francisco Jose Segovia, Vicente Fernández, Nerea Meyer, Cesar Asensi, Victor Arriola, Cinta Varea, Francisco Mas, Alexander Trotchinsky, Rafael Domínguez, Manuel Coves & Paulo Vieira
今回の強化月間にあたっては、iTunes Storeでナクソスの室内楽曲シリーズ三枚が最初に目に付いたので聴いてみたのだけれど…どうも、第一集の弦楽四重奏曲とかは地味で微妙な感じ。第三集はピアノソナタ等が入っていて、これは地味だけどそこそこ面白い。この三枚からなら上のリストのみっつめに挙げた第二集が良いと思う。ストラヴィンスキーやミヨーを彷彿とさせる、カクカクがたがた新古典主義的な曲Divertimento, Op. 7aが楽しいので。リストのふたつめ、同じくナクソスのオーケストラ曲を集めた一枚も同じ趣向の曲が多く入っていて楽しい。
スペインっぽさは、どうなんだろう…全体を通してあまり感じ取ることがなかった。上に挙げたリストの二枚目にはオーケストラ伴奏の歌曲が入っていて、これだけはスペインっぽさ満載だった。歌曲だと地が出るのか野生に戻るのか、他のみんなもそういう傾向がある。弦楽四重奏だのピアノ・ソナタだのというフォーマットで作曲しようとすると、良さが死んでしまうというか習作っぽくなってしまうのか。
Sun, 29 Apr 2012
グラナドスのヴァイオリン・ソナタ
一応、作品一覧等には載っているのだけれど、ほとんど演奏されることもなく埋もれてしまっている。初めて聴いたのは、大津純子さんという日本のヴァイオリニストの録音だ。「大津純子 マラゲーニャ」手元にあるはずなのに出てこなくて、リンク先のアマゾンでは中古で投げ売りになっているけど、入手可能だと判ったときはとても嬉しかった。その解説においては、LP時代に一度録音されたのみ、とある。iTunes Storeでは、ふたつみつかった。
- Ravel, M.: Violin Sonata - Respighi, O.: Violin Sonata - Granados, E.: Violin Sonata - Frederieke Saeijs & Maurice Lammerts van Bueren
- Turina: Works for Violin and Piano - Bruno Canino & Felix Ayo
…みつかったのは良いけれど、微妙に埋め草っぽい扱いなのはとても心外だ…フェリックス・アーヨの録音のほうではトゥリーナの全集のお尻にポツンと入っていて、最初それと気付かなかった。ぼーっと聴いていて「あれ、これって聴いたことある」となった。
曲はほんの10分と少し、単一楽章の曲。でも、曲の開始から息を飲むような美しさ。ゆらゆらとたゆたうヴァイオリン。この曲が等閑視されているのは解せない。おれ、ドビュッシーのヴァイオリン・ソナタよりこっちのほうが好きだな。